養蜂の産物



 養蜂から得られるものには、ハチミツやローヤルゼリーはもちろんのこと、それ以外にもいろいろな副産物があります。

その一つが「蜜ロウ」です。

  巣づくりを担う働きバチは、腹部の腺から「ロウ」を分泌し、6角形の部屋(巣房)をつくります。巣房はミツバチたちの家であり、この部屋に女王バチが産卵し、働きバチが子育てをします。ハチミツや花粉などの貯蔵庫にもなりますが、ハチミツを保存するためにはロウでできた防水性でなければいけません。ちなみに巣房は一見同じ大きさに見えますが、大小2種類あり、小さい部屋は働きバチ、大きい部屋は雄バチ用と産む分けられます。

 養蜂の現場では、巣箱の中にある巣枠の外側のちょっとした隙間にも、ミツバチがどんどん新しい巣を作ります。そのままにしておくと、巣枠が巣箱にくっついてしまい、作業に支障がでるので、見つけると取り除きます。また巣房にたくさんの蜜が蓄えられると、ミツバチは保存のためにロウでふたをしますが、採蜜のときには、その「蜜ブタ」もナイフで切り取ります。 これらの巣を精製したものが「蜜ロウ」と呼ばれているのです。

 巣箱には巣枠という四角い木の枠があり、この1枚1枚に巣があります。養蜂では、まずこの巣枠に巣礎(すそ)と呼ばれるロウでできた板を固定しますが、その巣礎の材料となるのも蜜ロウです。新しい蜜ロウだけではなく、古いのが混ざっている方がミツバチには好まれるそうです。働きバチがこの巣礎の6角形に合わせて、ロウを盛り上げ小部屋を作っていきます。ミツバチの状態や花粉の量にもよりますが、条件が整えば、わずか3日ぐらいで新しい巣が完成します。これらの巣は、約1年から2年の間隔で順次交換されていきます。

 最近のロウソクは、石油から精製されたパラフィンでつくられたものがほとんどですが、タイではお寺のロウソクやロウ人形用に蜜ロウの需要があります。また柔らかく、安全性という点からも、口紅やリップクリームなどの化粧品、座薬 や軟こうなどの医療品、食品のコーティング等にも使われています。  

 このように、実は、生活のいろいろな場面で、ミツバチが与えてくれた蜜ロウが使われているのです。

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現地レポート

2015年10月号


<写真の解説>

1...巣箱の中の少しの隙間にも新しい巣がつくられる。

 

2...積み上げられた蜜ロウ。ミツバチが食べる花の蜜や花粉によって色が変わってくる。

 

3...腹部の腹側にある、蝋を出す「 ろう腺 」

 

4...採蜜のときに取り除かれた巣や蜜ブタは、精製して蜜ロウに。エーンさん

 

5..ローヤルゼリー採乳のときにも人口王台のフタを切り落とすが、これも蜜ロウ。

 

6..王台のフタの部分も、まとめて精製され蜜ロウになる。

 

 

7...人工的に蜜ロウでハチの巣の形をつくった巣礎(すそ)に、ミツバチがロウを分泌し作り上げた巣房。 エーンさん

 

8..ミツバチによって作り上げられた蜜ロウ。